沖縄・辺野古への土砂投入を阻止する陸海にわたる粘り強い行動が続いている。基地建設をめぐる県民投票は、5自治体が拒否していたが、県民の闘いの末に2月24日に全県で実施されることになった。カヌーチームの金治明さんに、現地情勢と県民の思いを寄稿していただいた。(編集部)
大浦湾の軟弱地盤に阻まれボーリング調査すらできない実態
辺野古新基地建設は、大浦湾側の軟弱地盤に阻まれ、5年目になってもボーリング調査は終了していません。建設予定地=大浦湾側のK9護岸は設計変更もなしに目的外使用の海上運搬船の埠頭にして、沖縄防衛局は、連日大型ダンプ二百数十台分の砂利、土砂を投入するという違法工事をしています。
昨年の玉城デニー知事の勝利で、沖縄県民は辺野古新基地阻止を表明しましたが、安倍政権は12月14日に土砂投入を強行しました。それでも工事開始から4年5カ月で、埋め立て総面積の4%に満たない浅瀬区域だけです。
2019年は、元日早朝、日の出に向かってカヌーを13艇繰り出してスタートしました。浜では、360余名の住民とともに前名護市長稲嶺進、国会、県会市町村議員たちが集まり、歌や踊りなど和気あいあいの雰囲気に包まれながら、団結ガンバローで締め括られました。
1月5日、ゲート前集会には1000名が結集し工事車両の搬入を阻止。1月9日以降も土砂積み込みと運搬船出航阻止行動としてカヌーを出し、16日(18艇)、23日(17艇)、30日(15艇)と、ダンプの運び入れを大幅に遅らせました。
1月26日、「県民投票キックオフ集会」はゲート前に県内外から3000名が集まり、必勝を誓いました。
さらに2月2日のゲート前大行動では、3000名の結集でキャンプシュアブゲート前を制圧し、作業車両を1台も入れませんでした。カヌー隊は雨天のために海上行動を中止し、辺野古ブルーの旗を先頭に大阪行動の仲間の手作りゼッケンを身に付けてゲート前に参加しました。
2月6日の安和行動ではカヌー16艇、ゴムボート1隻、安和桟橋ゲート前に150名が結集し、終日機動隊の排除を受けながらも闘いました。
創価学会までが県民投票参加を要望5市投票不参加に市民の抗議殺到
現在の主要課題は、「辺野古埋め立ての可否を巡る県民投票」を成功させ、辺野古断念を安倍政権に迫ることです。
1月29日、沖縄県議会は全県参加の県民投票を実現させるために、県民投票不参加を決定した沖縄、宜野湾、石垣、宮古、糸満市の5市を参加させるため、県条例を再採択しました。前後の経過を記述します。5市が県民投票を実施しなければ、沖縄県有権者の31・7%(約36万7千人)が投票権を奪われ、玉城デニー知事自身も投票できなくなっていたからです。
自民、公明党および保守は、県議会で採択された県民条例「辺野古埋め立ての可否を巡る県民投票」を、「埋め立て反対、賛成の二択では県民の総意が掴めない、普天間の危険性除去の文言がない」「賛成、反対、やむを得ない、どちらでもない」がよい「市議会の決定を尊重する」と主張し、5市の県民投票拒否に同調していました。
このため新里県議会議長は、与野党の対立を緩和させるために、「賛成、反対、どちらでもない」の3択案を提出。一方、投票権を剥奪される5市の有権者が、市庁舎前座り込み、ハンガーストライキ、署名活動、賠償請求、市長告訴などを行い、5市長も県民投票不参加のゴリ押しができなくなったからです。
さらに、創価学会・公明党の「県民投票参加の強い要望」は、自民党県連の決定を揺り動かしました。この裏には、公明党の4月衆議員補選、7月参院選を見据えた政治判断があったと思われます。
なお沖縄公明党本部は、「普天間基地の県内移設反対」の立場を取っていますが、曖昧です。県知事選時、名護市内では「学会は辺野古反対」のチラシが張られ、デニー氏の応援演説時は創価学会の旗が振られました。地元紙は公明党の30%以上がデニー氏に投票したと報道しました。
1月29日の県議会では、「全会一致」で可決との合意が確認されていましたが、自民党議員5名が反対に回りました。このためか自民県連の2月4日常任総務会は全会一致で照屋氏の委員長続投を認めず、会長は辞任と、混迷を深めています。公明党は2月6日、県民投票に関しては「自主投票」に決定しました。
自民党 宮崎政久衆議院議員の暗躍5市長を集め県民投票条例拒否を指南
なぜ、県民投票は妨害され続けたのでしょうか。14年に宮崎政久衆議員は、辺野古移設反対を公約にかかげて当選した後、安倍政権が復活すると仲井眞前知事らとともに公約を反故にした人物です。宮崎氏は弁護士資格を有しています。その彼が、昨年12月に沖縄の保守系議員を集め県民投票反対を呼び掛けていました。学習会資料「県民投票条例の対応について」で彼は、詳細に説明し指南していた事実が判明しました。
5市長が県民投票の不参加を表明していた1月28日まで、玉城知事は5人の市長に会い協力を求めましたが、「議会の決議が重い」と実施を拒みました。うるま・島袋俊雄市長、宜野湾・松川正則市長らは、翁長雄志前知事を支える「オール沖縄」に対抗するために辺野古新基地の推進を掲げ決起した保守系首長らの「チーム沖縄」のメンバーたちです。沖縄は41市町村あり、11市中の南城、那覇の2市長が玉城知事を支えています。しかし、渡具知名護市長のように辺野古新基地問題を封印している市町村長もいるのです。
県民投票に否定的な首長たちは、「議会の決定を尊重する」と言いつつ、住民の直接民主主義を否定しています。間接民主主義を補完する住民直接の意思決定権は、何人たりとも奪えません。
私自身は、本来ならば「賛成、反対」の2択に絞り、「県民投票を破壊した市長の責任を問い、辞任を迫るべきだ」との与党会派の主張を反映すべきだと思います。それでも今回の住民投票運動は、「賛成であれ反対であれ、正々堂々と表明し県民投票で決着すべきだ」という県民世論を沸騰させました。市民たちは、自らの「参政権」を獲得するために、非暴力抵抗の闘いに決起したのです。
安倍政権は、官邸をあげ県民投票を潰そうとしました。しかし、憲法学者107名による「県民の参政権、投票権のはく奪は憲法違反」の声明や、県民世論の反発、さらに公明党の離反を恐れて、「賛成、反対、どちらでもない」の3択で妥協せざるをえなくなったのです。
最低でも7割の反対票を全国に支援要請 全力で闘い抜く
全国で市町村の住民投票がありますが、全県的な住民投票は沖縄だけです。県民投票は「辺野古埋立反対」が多数となっても、安倍首相は「沖縄県民の民意を参考に、環境と安全保障を引き続き勘案して基地建設を進めていきます」というような言葉を準備しているでしょう。
県民投票の結果に法的拘束力はありません。しかし、もし負けるようなことがあれば、安倍政権に辺野古推進のお墨付きを与えてしまいます。3択で決まった以上、私たちは投票率を上げなければなりません。最低でも反対票7割を取る覚悟です。絶対負けることができない闘いなのです。
「県民投票を成功させる名護市民の会」は、名護市長選、県知事選を共に苦労した大学教授、辺野古テント村、カヌー隊有志、ゲート前、名護市民有志と全国の仲間が担います。スタンディング、戸別訪問、ビラ入れ、自転車隊、道ジュネー(練り歩き)、街宣車、辻説法などから始めます。
仲間たちの飛び入りは、大歓迎です。行動費用は各自持ちより会費や「名護市民の会」を支援してくれる仲間のカンパで運営します。少ない資金で大きな勝利をめざします。私たちは「県民投票を成功させる名護市民の会」の事務所を名護市中心部に立ち上げ、活動しています。
仲間のみなさん! 労力、知恵、財力をお貸しください。沖縄名護辺野古現地に来れる仲間はぜひ来てくれませんか? 私たちは全力で闘います。県民投票成功に向けたご協力、ご支援をお願いします。
連絡先:〒905―0013沖縄県名護市城2-9-10TEL(090)1865-8536金 治明 まで